迷わず行こうよ、行けばわかるさ

何でも経験してみなけりゃわからない。やってみると先がみえるよね。還暦オヤジのダイアリー。

円高だねぇ

えー円が85円を切ってます・・・個人的には120円前後でドル立て投資信託していて15%以上の運用益がありますが、為替差損が-30%で結局かなりのマイナスです(笑)運用メインなのでかなりキテマスがリーマンショック以降、”すべての運用が凹んで”、凹むことに慣れてしまってまして、まずいですね(笑)
そこに村上龍さんのJMMでタイミングよく円高についてメールがきました。複数の専門家ご意見の中から、一番理解しやすかったのを転載させていただきます。以下JMMより転載します。飽きずに読んでみてください(笑)

最近の円高を見ていると三つの点で少し悲しくなります。先ず、為替レートの水準自体の問題ですが、日銀のホームページで円の実質実効レートのグラフを見ると、それほどの円高ではありません( http://www.stat-search.boj.or.jp 1980年くらいからの推移を見てみて下さい)。実質実効レートは貿易のウェイトと物価水準を考慮して為替レートの高安を見るものですが、現在の水準は2005年を100としたこの指数で110に至らない程度の円高で、150に迫った95年のレベルはもちろん、130を超えた1999年から見ても、「まだまだ」のレベルにあります。端的に言って、「我が国は極端な自国通貨高に困っている」と言っても、他国から同情して貰えるような状況ではありません。

一方、実感として「1ドル=85円」というと結構な円高ですが、これは、一つには近時の米ドルが円以上に弱いためですが、円自体の要因としては、長年続いているデフレによる、他国との物価変動率の差がもたらしたものです。しばしば胸焼けのするようなファスト・フード商品の価格などで説明されますが、為替レートは長期的には各国の物価を調整するように変動します。デフレが問題だとされながらも、その問題を解決できなかったことが、現在の為替レートを招いているのであり、日本の問題解決力の乏しさをあらためて感じることが、第一の悲しさの原因です。
尚、為替以上への介入(たとえば米ドルを買って、円を売る)は、通貨の供給量を増やすので有力な金融緩和策の一つですが(注;円資金を吸収しない介入とする事が必要です)、上記のような理由で国際的には、日本が自国通貨を安く誘導することが納得される状況にはなさそうですし、少なくとも、米国などの協調介入は期待できないでしょう。日本政府が単独介入に踏み切った場合、一時的に少々円安に動いても、他国からの非難があった瞬間に「これ以上の介入は無理」と足許を見られて、強烈な円買いを浴びる可能性があるように思います。レベルを動かすような介入に単独で踏み切る場合は、相当の国際的な非難を跳ね返す覚悟が必要でしょう。効果は間接的ですが、国内の金融緩和が進むか、将来の緩和方針が今以上に認知されて、その結果として円安に変化するのが、日本の経済にとっては最も無難且つ望ましい形でしょう。

二つめの悲しみの原因は、日本の経済の希望が円高に深く関係する「外需」にしか希望を見いだせそうにないことです。円高の進行は、これから「エコ・カー補助金やエコ・ポイントなど、一連の「エコひいき」(率直に言ってアンフェアでしょう)が終わる自動車や電気産業を直撃することに加え、日本の国際的な賃金を高くするので、多方面で雇用にマイナスの影響を与えます。これまで、多少なりとも景気が回復してきた原因は、中国など新興国の需要を中心に世界の景気が拡大してきたことですが、来年度予算が緊縮的であることもあり、今後の景気回復も外需に頼るしかなさそうな状況です。

但し、日本の景気が外国頼みであることは、日本の経済的存在感の低下を反映していますが、他方、我が国のロケーションを考えると、一方的に悲しむべき事ではないかも知れません。世界の経済成長は、中国を中心とするアジア地域で主に期待されるので、地理的に我が国にはそれなりのメリットがあります。

三番目の悲しみは、今後深まる可能性があります。日本経済の状況は上記の通りの情けないものですが、最近の為替レートの動きは、「それでも、他の先進国の状況に較べると、日本がマシなのかも知れない」という、市場参加者の判断を反映しています。今回の円高の原因は、一つにはギリシャに端を発した欧州経済の不調、もう一つには、米国の雇用の改善の遅れなど、他の先進国の経済状況の悪さです。

こうした中で、他の先進国の政府は、急激に財政赤字を拡大していますが、それにもかかわらず長期金利が急低下しています。これは、民間部門の借入の急激な縮小を、政府の借入の拡大が吸収し切れていない状況の反映であり、前者の背景には、不動産価格の低下などに伴う、民間の融資姿勢の消極化があります。

これは、日本が1990年代から2000年代初頭にかけて経験した「失われた○○年」の展開と同じ構造です。財政的な刺激策で少々景気が上向いたように見えても、それが切れると直ぐに息切れするという、目下の先進国経済の展開は、日本人にとって既視感のあるものです。

米、英、独の10年国債利回りは、低下傾向にあり、何れも2%台に入ってきました(英国はぎりぎり3%近辺ですが)。長期金利の低下は、将来の名目成長率の低下予想を映していると解釈する事が可能であり、主に先進国の経済ですが、「グローバル経済の日本化」とでも呼びたくなるような、冷たい経済の時代がやって来るのかも知れません。相対的に、まだしもということで、円が買われている」という現状には、こうした可能性の気持ち悪さがあります。
もっとも、円高は、日本の経済的弱者にとって現実的な脅威ですが、消費者にとっては吉事です。たとえば、雇用に心配が無く、収入が(殆ど)減らず、という意味で、公務員及びその配偶者などは、円高のメリットを享受する利益集団だといっていいでしょう。「だから、デフレも円高も収まらないのか!」と思うと、今度は悲しみではなく、怒りが湧いてくるかも知れませんが、「価値が高くなった円」を有効に消費や投資に使うことを楽しむのはいいことでしょう(しかし、企業人にとって円高下の「投資」として有効なのは、海外への生産移転のための投資でしょう)。
この際、公務員でない人も、持ち金の価値が上昇したことに感謝して、機嫌を直して、ポケットマネーを使いましょう!
経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員:山崎元